特別検討委員会 報告書(第一部)受領のお知らせ

本学は、2020年5月26日に発足した「特別検討委員会(委員長:JohnathanT. McCaskill氏)」より、報告書(第一部)を受領いたしましたので、ここに公表いたします。なお、元学生らのプライバシーに配慮し、個人の特定につながり得る記載等については、省略しております。

1. 序論

2020年2月にキリロム工科大学で起きた7名の日本人学生の退学処分およびその関連事項について、2020年5月同大学は特別検討委員会のメンバーを選別した。特別検討委員会は退学に関する事実確認、キャンパス上での生活の質と同大学施設に関し、在籍していた学生および在籍している学生より寄せられた苦情と懸念の調査を行う。調査の最後にはキリロム工科大学に対し、経営、施設および教育設備の向上に向けた提言をする。

 

この報告書では退学を言い渡された7名の日本人学生と、退学の理由について検討する。

2. 対象者

  1.  A氏:男性、日本国籍
  2.  B氏:男性、日本国籍
  3.  C氏:男性、日本国籍
  4.  D氏:男性、日本国籍
  5.  E氏:男性、日本国籍
  6.  F氏:男性、日本国籍
  7.  G氏:男性、日本国籍

3. 参考人面談、証拠調査

今回調査の過程において、当委員会は報告書に記載された事実について直接知っている19人に聴き取りを行なった。これにはキリロム工科大学 の運営メンバー3人、教職員6人、カンボジア人5人と日本人5人を含む現役および元学生10人が含まれる。特別検討委員会は、運営部、教職員、カンボジア人学生には英語で、日本人学生には日本語で聴き取りを行なった。聴き取りはほぼ全てZoomまたはGoogle Meetプラットフォームを介し、1〜2時間かけて行われた。証人の1人が特別検討委員会 の質問に書面で回答した。

 

特別検討委員会は退学となった学生たちに彼らの言い分を聞くため連絡を取ったが、特別検討委員会に協力することに同意した元学生は1人もいなかった。

 

特別検討委員会が面談を行った複数の参考人がプライバシーに関し懸念を抱いていることを示したため、調査書では陳述内容を伏せている。

 

特別検討委員会は事実に関して直接知っている参考人の他に、退学を言い渡された学生全員の出欠表、C氏が関与している2020年2月27日頃に起こったビッグパーティーテントの映像、退学を言い渡された学生の何人かによって書かれたブログ投稿を含むキリロム、キリロム工科大学について書かれたブログ投稿、キリロム工科大学のポリシー文書、学生契約書雛形を検討した。

 

加えて、特別検討委員会はキリロム工科大学の学生100人以上が参加した、同大学食堂で提供される料理の質、授業、医療ケアを含む項目を網羅したアンケート調査を分析した。より重要なこととしてアンケート調査には、学生の自由記述も含まれている。

4. 特別検討委員会

特別検討委員会は、5名のメンバーと、キリロム工科大学のポリシー文書が記述された文書、参考人、その他必要な情報を提供するために特別検討委員会への橋渡し役となった1名が加わる、6名で構成されている。

 

次は特別検討委員会メンバーの経歴である:

 

1. ジョナサン・マカスキルは国内と国際刑事法に20年以上の経験を持つ米国弁護士。武器、麻薬密売、汚職、戦争犯罪、人道に対する罪、テロリズムなど国際刑事法を違反する事例についての調査、起訴をしてきた。ジョナサンは現在東京の大学2校で非常勤講師として教壇に立ちながら、テクノロジースタートアップ企業で最高法務責任者を務める。

 

2. マリコ・ヒガシは発展途上国の民間部門と経済部門の専門家。また、投資、助成金管理、地域戦略、水資源管理、複数の日本の大学で非常勤講師をしていた経験も持つ。

 

3. センヘン・ハル博士は産業科学技術革新省内の科学技術革新総局長、およびカンボジア王国首相に配属されている大臣補佐を務める。

 

4. バナリス・チェン博士は東南アジアを中心とした地政学、地政学アナリストとして10年以上の経験を持つ、公共政策アナリスト、政府関係戦略家。現在、アジアビジョンインスティテュートの代表取締役を務めており、地政学的リスク分析、ガバナンスイノベーション、包括的デジタル経済、持続可能な開発目標(SDGs)のプロジェクトを主導している。

 

5. ローズマリー・タンは起業家であり、マレーシアで名高い不動産開発会社のマネージング&クリエイティブディレクターを務める。ローズマリーの物件の1つは、マレーシアの不動産ディベロッパートップ30で紹介され、オーストラリア、メルボルンで開催された世界持続可能な建築物会議でも取り上げられた。

 

ここで注意すべきことだが、特別検討委員会メンバーのうちバナリス・チェンとローズマリー・タンはキリロム工科大学の理事会メンバーでもあるため、学生7人の除籍に関する聞き取り調査には一切参加していない(特別検討委員会の報告書の第一部)。特別検討委員会への参加には、当校で提供される教育プログラム、インフラ、および学生サービスを評価することが含まれていた(特別検討委員会の報告書の第二部)。

5. キリロム工科大学について

キリロム工科大学(以降より、「KIT」、「大学」と記載)は私立の高等教育機関で、カンボジア首都のプノンペンからおよそ110km南西に位置するキリロム国立公園に所在する。KITは2014年にイズカ・タケシ氏によって創立され、カンボジア政府によって教育機関として運営する認定を得ている。また大学は、A2A Town Co., Ltd.(以降より、「A2A」と記載)に所有されている。

 

KITはキリロム山頂に所在しており、松の森に囲まれている。結果として、同大学には光ファイバー回線、病院、公共交通機関、大学街にあるような歓楽街などのインフラ整備が整っていない。また、KITはA2Aが所有し運営されているキリロムパインリゾートの隣に位置しており、時として同大学と施設を共有する場合もある。

 

大学の位置する環境と同様に、KITの教育課程もユニークである。同大学は先端技術IT学科と観光経営学科の専門学位プログラムを提供しており、観光経営学科の学生が隣接するリゾートの管理に参加し、先端技術IT学科の学生は実際起こっている問題の解決に取り組む、というような教育に重点を置いている。実際、教室での学習に加えて、両学科の学生は大学の提携企業でのインターシップ参加が卒業要件となっている。

 

KITでは全ての授業の指導言語に英語を使用しているという事実も他大学と一線を画す点と言える。同大学の学生は、特定のクラス以外では、英語で話し、書くことが求められる。一定数の学生にとっては困難な必須要件ではあるが、調査中に面談を行った上級生や卒業生は、この課題を克服して、入学から数学期以降は問題なくコミュニケーションがとれるようになったと話していた。

 

学生の語学力を向上させるため講師は最初の1年は、専門分野の他に英語でのコミュニケーションを集中して指導し、語学やコミュニケーションを上達させるような課題を取り入れた授業計画を組み込む傾向にある。

 

KITで最もユニークな特徴は学費システムだと言える。特別なスポンサープログラムで入学をした地元カンボジア人の学生は、学費、食費、寮費が免除される。このスポンサープログラムで入学をする学生は最低限の成績を保ち、KITによって企画されたインターシップを修了し、KIT、A2A、または提携企業において決まった期間雇用されることが求められる。留学生(現時点までにおいての留学生は全員日本国籍である。)は学費、寮費、その他の費用を支払うが、通常、日本の金融機関から低金利のローンを受け取っている。学生が優れた成績を収めたり、インターシッププログラムで優れた評価を得て、卒業後にKIT、A2A、または提携企業で決まった期間雇用されることを受け入れれば、KITが全て、または一部のローンを肩代わりすることに合意している。このプログラムによって無料、または大幅に少ない学費のみでKITに入学することができるのが留学生にとってのアピールポイントになっている。

 

日本人起業家であるイヅカ氏は、当初2014年先端技術IT学科でカンボジア人学生25名で大学を開校させた。学生の数は年々順調に増え、2018年までには100人以上の学生が入学していた。2018年、第一期生が卒業し、多くの卒業生(およそ70%)は日本のIT業界に就職をした。このような成功の事例から、カンボジアに留学しエンジニアを学びたい日本人学生にも入学の枠を広げ、初めての日本人学生がこの年に入学した。

 

2019年、将来的には建築学科と、ソフトウェアエンジニアリング専攻の修士号プログラムも開校させる計画で、観光経営学科を開校させた。

6. KITにおける規則と規定

KITでは、各学生と大学との契約書や「KIT学生ハンドブック」において、KITの情報技術ポリシーなどの明確な規則と規定が記載されている。特別検討委員会は今回の取り調べが起きた際に有効であったKIT学生ハンドブック 2019-2020年版の調査を行った:

 

<2.6条 授業出席>

 

学生は時間通り、そして熱心に授業に参加する。KITでは、学生の時間厳守と規律が求められる…

 

学生が緊急の理由(病気など)で授業に参加できない場合は、事前にそれぞれの授業のクラスアドバイザーに欠席を連絡する。学生はWorkplaceアプリ、またはEメールでクラスアドバイザーに欠席を連絡することができる。授業日から24時間以内に不在の理由を説明できない場合、欠席として記録される…

 

学生は学期末までにそれぞれのコースで85%以上の出席率が求められている。出席率85%以下の学生は、対象コースの期末テストを受けることができない…

 

 

<5.0条 学生規律・苦情システム>

 

KITのねらいは学生の個性、知識、専門的スキルを向上することだが、KIT卒業生という肩書を背負うことのできる学生を生み出すことを重んじている。そのためKITは、カンボジアの法律、または大学の規則や規定に比例した一連の懲戒処分を実施することを留保する。懲戒処分は、規則違反の性質に基づいて、口頭警告から退学にまで及ぶ。暴行、嫌がらせ、または規則違反を目撃したKIT職員は、直ちに大学理事にその行動を報告する。

 

 

<5.1条 学生の行動規範>

 

キリロム工科大学の学生は次の規則に従うこと。規則違反の場合には、懲戒処分を実施する。

 

· KIT教職員、事務職員、スタッフ、他の学生に対して敬意を持って接する。

· 課題、テストの準備、インターンシップのプロジェクトに誠意を持って取り組む。

· 必要な場合には他の学生とのコミュニケーションをとる。

· ソーシャルメディアページ、slackグループ、掲示板を通して大学より発表された公式の締め切り日、日付を順守する。

· 授業やワークショップに時間通りに出向かう。

· 知的財産権、著作権法を順守する。

· ドレスコードに従う。

· インターンシップ中はクライアントとの守秘義務契約(NDA)を順守する。

· 機械や危険物を扱う際は、大学の規定を厳守する。

· 学生寮の規則や規定に従う。

 

 

<5.7条 学生による抗議>

 

学生(または学生の代表者)は、自身に対して取られた懲戒処分に抗議する権利を有する。不当に告発された、または無実であると感じた学生は、懲戒委員会に出席する機会が与えられる。懲戒委員会は双方の意見に耳を傾け、あらゆる状況に照らして公正な決定を下す。懲戒委員会による決定は最終的なものであり、それ以上抗議することはできない。

 

 

 <5.8条 懲戒処分>

 

学生に対する懲戒処分は、口頭警告から、退学にまで及ぶ。次は懲戒処分の例である:

1. 口頭警告

2. 最大3回までの書面警告(書面警告は学生の保護者に送付される)

3. 問題をKIT経営陣に報告し、経営陣の決定に従う。

4. 教室からの追放

5. 課題評価が0になる、またはKITの単位喪失

6. コースで落第点を与えられる

7. 損害の額・程度に基づいた罰金

8. KITからの退学

 

2020年2月27日、大学の懲戒委員会が率いる調査の結果に基づいて、調査書に記述されている対象学生全員の退学が言い渡された。懲戒委員会はKIT副学長1名、上級講師2名、学生関係スペシャリスト1名、学生代表1名から構成されている。懲戒委員会の調査によると、学生はKIT内の規制を違反したと判断された。次は規制違反の内容である:

 

1. クラスプロジェクト、活動への欠席、不参加

2. 授業中の規律を乱す行動

3. クラスアドバイザーへの脅迫、ハラスメント

4. 学生医療センターで患者とスタッフを映した無許可撮影行為

5. KIT経営陣会議の無許可音声録画行為、および/またはその映像の公開

6. 上記で示された無許可音声録画行為、映像公開に対して行われていたKIT当局による調査への協力拒否

 

1)出席状況について

2)具体的な違反行為の申し立て

        a. 2019年11月、ビジネス英語クラスでの事件

        b. 2020年2月、組織行動学クラスでの事件

        c. 2020年2月、Java・スカラクラスでの事件

        d. 2020年2月、コワーキングスペースでの事件

        e. 無許可での映像公開、KIT関連情報公開、大学内調査への協力拒否

        f. KITによる懲戒処分 

7. 議論

8. 結論

上記で示した資料、面談を行った参考人の話を調査した結果、次のような結論に至る:

 

1. B氏、C氏、D氏、F氏、G氏:授業に遅刻し、熱心に参加できなかったのは学生ハンドブック条項2.6、条項5.1の違反である。また、出席率85%以上を達成できず、期末テストを受ける権利をはく奪されていたため、落第点になる可能性が高かった。

 

2. B氏、C氏、D氏、F氏、G氏:授業中に携帯やタブレットを使いゲームをする、授業中にSNSメッセージを送る、クラス活動に参加しない、クラスの課題を行わない、授業中に居眠りをする、KIT教職員、事務職員、スタッフ、他の学生に敬意を持って接することができなかったのは学生ハンドブック条項5.1の違反である。

 

3. C氏:授業中に講師の指示に逆らう、講師に怒鳴る、ほとんどの場合見下した、失礼な態度をとる、講師、事務職員、他の学生に対して敬意のない態度で接する、授業やKIT活動の中で規律を乱す行為をするのは学生ハンドブック条項5.1の違反である。

 

4. A氏、D氏、E氏 、G氏: 看護助手の評判を傷つける目的で情報をインターネットに公開する可能性があると分かっていながら第三者に録音を受け渡すため、当該看護助手の認識や同意もなく秘密裏に当該看護助手の発言を録音する計画をした、KIT教職員、事務職員、スタッフ、他の学生に対し敬意を持って接することができなかったのは、学生ハンドブック条項5.1の違反である。

 

5. A氏、B氏、C氏、 D氏、E氏、F氏、G氏:機密情報、個人情報の漏洩の原因を探るため行われた大学の懲戒委員会への協力拒否、学生ハンドブック条項5.7に基づく全ての状況を照らし合わせ、公正な判断を下す妨害をした。懲戒委員会 は、7名の学生全員が学生ハンドブック5.1条に違反しているという充分な証拠があると結論付けた。

 

学生ハンドブック条項5.8の懲戒処分には規則違反の性質に基づき警告から退学にまで及ぶと記載されており、上記に述べられた学生7名の違反事項を検討したところ、大学には学生を退学にする権利があり、またその決定は正当であると言える。

以上

 

18 May 2021

KIT Special Review Committee Administration Office

 

令和3年5月18日